豚インフルエンザの発生は、テクノロジーと、テクノロジーが可能にした人と人との強固なつながりが間違った方向へ進んでしまう可能性を示す重要な例だと一部で指摘されている。
これまでに豚インフルエンザはメキシコで少なくとも86人を死に至らしめ、米国、カナダ、フランス、イスラエル、ニュージーランドでも感染が確認されている。米政府は豚インフルエンザに対処するために公衆衛生に関する緊急事態を宣言した。同国では少なくとも20例の感染が確認されている。
しかし一部では、Twitterのようなサービスが必要以上のパニックを広めていると指摘している。その一方では、この種のサービスは迅速な情報共有を可能にするため、ウイルスの拡散を防ぐカギになり得るとの意見もある。
エブゲニー・モロゾフ氏はブログForeignPolicy.comで、今回のような状況では、Twitterが誤解を広める可能性があると主張している。
同氏は次のように述べている。
まず指摘しておきたいのは、Twitterの「グローバルな頭脳」が豚インフルエンザまん延の可能性にどのように反応しているかを理解しようとすると、がっかりするだろうということだ。(Twitterでの)これまでの豚インフル情報は誤っており、恐怖を広めるプラットフォームで武装したパニック状態の人たちが、さらなる恐怖と誤解とパニックを巻き起こす可能性が高い。
基本的なインターネット検索――Googleでは既に、新たなインフルエンザのまん延を追跡するのに利用されている――とは違って、Twitterはあまりに多くのノイズを持ち込んでいるようだ。特定のテーマについてもっと知りたいという欲求にのみ突き動かされた検索リクエストとは違って、Twitterでの豚インフルエンザに関する投稿には周りに迎合したり、友人と同じことをしたり(つまり豚インフルエンザについて投稿する)、単に人気取りをしようとしているように思えるものが多過ぎる。
モロゾフ氏は、豚インフルエンザに関するTwitter投稿の多くでは、コンテキスト(状況)が分からないことが問題だと指摘する。「Twitterでの豚インフル騒動は、コンテキストの重要性があらためて証明された。コンテキストを欠いていることで、ほとんどのTwitterの投稿はひどく損なわれている。Twitterの問題は、140文字ではコンテキストをほとんど説明できないという点にある」
だがモロゾフ氏は、Twitterでの議論の99%では、コンテキストが分からなくても問題にならないだろうとも述べている。しかし「世界的にウイルス流行している状況――メディアが既に深刻な脅威をさらに大げさにしようとしている――では、数百万人の人々が自分の不安を140文字に詰め込んで公の場に漏らすことになり、パニックの伝播など危険な結果を招く可能性がある」と同氏は言う。
一方、Googleはもっと明確な情報を提供しており、インフルエンザの動きを地図化している。米メリーランド大学ボルティモア校のブロガー、ティム・フィニン氏は次のように述べている。
Googleは数カ月前から、検索結果の集計を基に米国でのインフルエンザの動きの最新推計を掲載した特別な「インフルエンザ動向」サイトを運営している。
同社は、インフルエンザ関連の検索をしている人の数が、実際にインフルエンザの症状を示している人数の先行指標になることを発見した。同社はこの指標が「従来のインフルエンザ監視システムよりも最大で2週間先行して、インフルエンザの動きを示している可能性がある」と確信している。
Google Map Maniaブログでは、メキシコの豚インフルエンザの拡散を示す、ある組織の作った地図を取り上げている。この地図は「ウイルスの流行を地図化しようとする協調的、社会的共有の取り組みで、ユーザーによる情報の提供が必要となる」という。このブログでは、Google Maps技術で作成されたほかの関連地図も紹介している。
Broadstuff.comは冗談半分で、Twitterでの豚インフルエンザまん延を避ける方法を説明している。
1. 豚インフルの投稿をまき散らしている人とはかかわらず、手を切ること。彼らの感染が治るまでは、フィードの購読をやめる
2. Twitterの豚インフル投稿に感染したと分かったら、すぐにネットを切断すること。とりあえず医者2人に見てもらって、明日の朝電話して(訳注:「とりあえずアスピリン2錠飲んで、明日の朝電話して」という医者の常套句のもじり)
3. 汗ばんで、インフルエンザのような症状が出ている場合、風邪の可能性は90%、人間のインフルエンザの可能性は9%、暖房が効き過ぎている可能性が0.9%、思い込みの可能性が0.09%、さっき食べたタンドーリが辛過ぎた可能性が0.009%だ
4. この(Broadstuff.comの)投稿からすぐに離れること
冗談はさておき、豚インフルエンザ発生は現実に起きており、恐ろしいものだ。フランスで感染が確認されたことを、わたしは少々心配している。今ニースにいるからだ。行きの便で、たまたま同じ列にカンヌのウイルス関連会議に出席する科学者が座っていた。鳥類とインフルエンザの流行を専門とするその科学者は、第3回国際インフルエンザワクチン会議に向かっていた。会議は豚インフルエンザの話題で持ちきりだろう。
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