改正薬事法で得をしたのはいったい誰なのかネットの逆流(19)(1/2 ページ)

6月1日に施行される改正薬事法で、医薬品の販売が変わった。はたして、これでよかったのだろうか。いま一度考え直してみたい。

» 2009年05月31日 16時41分 公開
[森川拓男,ITmedia]

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 6月1日、いわゆる「改正薬事法」が施行される。これにより医薬品の販売が、大きく変わる。施行を前にして、マスコミは新たに一部医薬品の販売が可能となるコンビニエンスストアやスーパーマーケット、対抗するドラッグストアなどでの対応について報道している。風邪薬や胃腸薬などの医師の処方箋を必要としない一般用医薬品、いわゆる大衆薬の販売が規制されることで、商戦の激化、業界地図の再編なども発生しているのだ。

医薬品販売が変わる

 今回の改正薬事法では、規制の緩和だけでなく、強化が行われていることを忘れてはならない。

 今回の改正では、大衆薬は3段階に分類された。副作用に注意が必要な度合に応じて振り分けられたものだが、これによって、より注意が必要とされた第1類に分類された医薬品は、薬剤師が副作用などの説明をした上でないと販売が認められなくなる。この第1類には、強力な胃腸薬や鼻炎薬、禁煙補助剤、発毛剤、水虫薬などが含まれている。

 一方、比較的安全とされた第2類と第3類に関しては、新たに設けられた「登録販売者」の資格さえあれば販売が認められる。したがって、コンビニなどでも、登録販売者がいれば、第2類と第3類の医薬品販売が可能になるわけだ。ちなみに、風邪薬や胃腸薬のほとんどは第2類に、ビタミン剤などは第3類に分類されている。

 ここまではいい。副作用などを考えると、仕方ない部分もあるかもしれない。だが、第1類に分類されたものの中には、できればこっそりと購入したいものが含まれており、非常に買いづらくなる可能性が指摘されている。

 しかし問題は、これらの販売の前提が、「対面販売」とされていることだ。厚生労働省(厚労省)の省令により、電話やインターネットなどを使った通信販売は、たとえ薬剤師であっても第3類しか取り扱えなくなる。対面販売では規制が緩和されるのに、ネット販売では規制が強化されるのだ。この問題に関しては、2月23日に医薬品のネット販売は本当に規制すべきなのかを書いた。あれから3ヵ月余り。そこで記したように、厚労省は、専門家による検討会を設置して議論をおこなうとしていた。それから、いったいどうなったのか。

本当に議論する気はあったのか?

 厚労省は、5月12日に「薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」を公表すると同時に、パブリックコメントの募集を開始した。ただし、5月18日までの1週間しか募集期間が設けられておらず、形だけのものになっているように見える。それにしても、5月26日におこなわれた最後の検討会で発表されたパブリックコメントの結果、寄せられた9824通のコメントのうち、84.9%にあたる8333通が、ネット販売規制に反対していたという。結局は、「きちんと国民の意見を聞きました」というアリバイ作りをしただけで、なし崩しに6月1日の施行を迎えさせたのだ。本当に議論する気があったようには思えない。

 厚労省は経過措置として、離島居住者や、以前からの継続使用者に関しては、伝統薬などの薬局製造販売医薬品と第2類医薬品のネット販売を、今後2年間は可能とする省令を5月29日に公布・施行した。しかし、この経過措置に対しても、ネット販売を希望する側、禁止を求める側の双方から異論が出るという「中途半端」なものになっている。

 これに対して、ネット医薬品販売のケンコーコムとウェルネットは5月25日、厚労省の改正省令は違憲・違法な省令であるとして、医薬品ネット販売の権利の確認と改正省令の無効確認・取り消しを求めて東京地裁に提訴した

 また、5月21日には衆院議員会館に、与野党の若手議員と有識者、消費者が集まって、ネット販売継続を強くアピールしている

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